【令和2年7月豪雨/肥薩線・くま川鉄道で大規模被害】梅雨末期の大雨で鉄道が壊滅的被害=廃止と言う方程式
「令和2年7月豪雨」により肥薩線・くま川鉄道で大規模な被害を受けた。梅雨末期には大雨が降る事が多くなっているがなぜか?鉄橋流出等の壊滅的被害=廃止と言う方程式が出来つつある。それは「交通機関として必要」なのか?否か?鉄道会社が決める所も大きいが鉄道の存在をもう一度よく考えるべきである
もくじ
★令和2年7月豪雨で肥薩線・くま川鉄道が大規模被害!肥薩線廃止の可能性は低いと見るが・・・

↑JR九州の肥薩線と並走する球磨川(写真は瀬戸瀬付近)では、2020年(令和2年)7月4日未明から昼頃にかけて、停滞した梅雨前線の影響で大雨になった。24時間雨量が500ミリ近くに達した。球磨川水位が未明の段階で4メートルほどだったのが、わずか5時間ほどで11メートルに上昇。熊本県芦北町、球磨村、人吉市等の各地で球磨川が氾濫した。川の水が溢れ出たため建物が流されたり、土砂崩れも多数発生した。
鉄道関係では、肥薩線の「球磨川第一橋梁」をはじめ複数の橋が流された😫第三セクター鉄道のくま川鉄道では人吉温泉駅(肥薩線人吉駅に隣接)と車庫が浸水して、同社所有の5両全ての車両が被害を受けた。肥薩線・くま川鉄道とも土砂流入(土砂崩れ)等の被害も数多く発生しているが、被災から1週間経過しても雨が止まない、並行道路も被害を受けているため、満足に調査出来ていないのが実態だ😫JR九州としては、「テレビ等の報道では間接的に状況を把握しているが、現場に行く事が出来ていないので直接的には把握出来ていない」としている😫
後術するが、Twitter等のネットでは「肥薩線廃止」がウワサされている。肥薩線の営業成績は極めて悪く、輸送密度だけで見てしまえば八代~人吉は600人程度なので、「1日600人しか乗らない鉄道を何十億円・何百億円もかけて直す必要があるのか?それだったらバス輸送に切り替えた方が合理的」と言うのが世間体と言うか、ネット民の考えだ。
肥薩線単体で考えれば北海道で言う「維持困難線区」と良い勝負なのであるが、在来線で熊本から鹿児島へ行く場合、JR線だけならば肥薩線を通らないといけない。肥薩おれんじ鉄道経由の路線もあるがこちらは私鉄のため、JR九州が自社の車両を運行する際にはいろいろと都合が悪くなる。最近は少ないが肥薩線経由で業務用の列車(例えば配給列車、鹿児島所属の車両を小倉にある工場で整備を受けるために回送運転する場合など)を運転する時には重宝される路線だ。
「ななつ星in九州」の走行ルートでもあること、D&S列車が肥薩線全線で6つもある事から収益云々は別としてもJR九州の”看板商品”が多数あるので、そう簡単に廃止は出来まい。むしろ肥薩線を廃止となったらJR九州のブランドイメージの低下にもなりかねない。さらに九州の鉄道ネットワークを考えれば、肥薩線が消えればそれが崩壊する事を示す。そんな事は断じて認めてはいけないのだ。
そのため肥薩線は「令和2年7月豪雨」で廃止する事はなく、元に戻すのではないかと私は考える。とは言っても被害の規模が大きく、治山、治水、土木等の公共事業的な側面の工事もあるため、JR九州単独で出来ない事も多い。今後国(特に国交省)や地元と一体的に周辺の復興や肥薩線の復活が行われるのではなかろうか。そうすれば年単位の時間がかかるのは仕方ない😞
肥薩線、くま川鉄道以外にも、肥薩おれんじ鉄道や鹿児島本線(川内~鹿児島中央)、日南線、久大本線(豊後中村付近)等でも鉄橋が流されたり、土砂流入等の被害を受けている。「令和2年7月豪雨」は九州での被害が目立つが、岐阜県や長野県での被害も大きい。

「令和2年7月豪雨」に伴う高山本線及び飯田線の被災状況について(JR東海ホームページ)
↑JR東海の高山本線下呂~高山間、飯田線の水窪~平岡間でも土砂流入や線路冠水等の被害が確認されており、山が大きく崩れている😰鉄橋が流される大きな被害は今の所確認されていないが、これら区間では「当分の間運転出来ない」としている😫
★梅雨末期には大雨が起こりやすいのか?
2017年7月の「九州北部豪雨」、2018年7月の「西日本豪雨」と近年梅雨末期に災害級の大雨が降って、土砂崩れや河川の氾濫等の大規模な被害を受ける。これが終わってやっと梅雨明け・・・と言うパターンになる事が多い😫少なくても近年は「梅雨はシトシト雨が続く」と言う事は少なくなった😫雨が降るならば、1時間に100ミリ前後となる事が増えている。
これも地球温暖化の影響で、例えば太平洋高気圧を日本上空に連れてくるほどの強い風が吹いていない、その強い風の吹いている場所が変化している、大量の水蒸気を含んだ風(天気予報では「温かく湿った風」と言う事が多い)が梅雨前線に注ぎ込まれている等である。
雨の降り方そのものもおかしくて、例えばある特定の狭いエリアでは前方の視界がないほどの大雨が降っているのに、3~4キロも離れれば雨が弱いか降っていない😫5分前までは何も雨が降っていなかったのに、5分後にはとんでもない両の雨が降る等極端すぎる天気の変化となっている😫こんな事は5年、10年前にはなかった事である。
「令和2年7月豪雨」にあったように、天気予報では7月4日に球磨川流域ではこんな大雨になるとは予想していなかった。だが実際には「線状降水帯」と称する”雨雲の帯”が長時間居座った結果このような結果となった😞気象庁や気象予報士でさえも線状降水帯の事前予想は非常に難しく、正直言って「いつどこで線状降水帯が起きてもおかしくない」と言う。赤羽国交相は「線状降水帯の予測精度を向上させよ」と指示をしたという。技術的には難しいのであろうが、線状降水帯がいつ・どこで・どれくらいの規模で・起こるのか?国民全員が知りたい情報なのだ。避難!避難!と言っても、台風のように何日も前から来る事がわかれば避難する事は可能でも、線状降水帯のように突発的に発生する気象状況については、気付いたら何も出来ない事に陥る事もある。球磨川の豪雨災害もまさにこのパターンだった😞
恐らく地球温暖化の影響で、今後も毎年梅雨末期には大量の大雨が降る事であろう。地球温暖化防止が手っ取り早い対策なのかもしれないが、そう簡単には出来ない。二酸化炭素等の温室効果ガスを出さない生活を常日頃からやる事が大切ではないかと思う。例えば、不要な電気は消す、買い物の時にマイバッグを持つ、自家用車の利用を減らして公共交通機関を出来る限り使う等の「エコな生活」を一人一人実践しないといけないのであろう。
★大雨で被災した鉄道=廃止と言う方程式



↑例えば日田彦山線の添田~夜明間は2017年7月の九州北部豪雨の影響で被災した😫この時は久大本線で鉄橋の流出があったが1年ほどで元に戻っている。それに対して日田彦山線は鉄橋流出等の致命的な被害は少ないものの、各所で土砂流入や設備の崩壊が目立つ。これを元に戻す事はなく、事実上同区間の鉄道復活を断念してBRT(バス高速輸送システム)にモードチェンジする事が決まった。つまり「添田~夜明間は鉄道を廃止する」と言う事である😫
久大本線は特急列車が運転していること、日田・由布院・大分と言った主要地区への輸送もある、九州全体的に見ると久大本線自体が鉄道ネットワークそのものを形成している・・・と言う事もあって元に戻しているのだ。一方でそのような要素がないのが日田彦山線。典型的なローカル線なのだ😫都市間の移動で日田彦山線を使うお客は少なく、基本的には地元の人を相手にした鉄道。
旅客鉄道はそもそもがそういうものであるが、今では輸送密度が低くく鉄道よりもバスの方が良いんじゃないか?😩と言う営業成績の路線が多い。とは言っても簡単には鉄道廃止は出来ない。ところが、「令和2年7月豪雨」のような大雨で壊滅的被害を受けると話は変わってくる。鉄橋は流された、土砂流入で線路は壊れた、車両が水に浸かって壊れたとなれば莫大の費用を要する🤑昔ならば鉄道会社が借金をしたり、国や地元から支援を受けてでも元に戻して復旧していたが、今や「費用対効果」が厳しく見積もられるようになった。
「何十億円、何百億円もかけて鉄道を元に戻した所で、利用者が増えず赤字経営になる事がわかりきっている。それなのになぜ多額の費用を投じて鉄道を元に戻さないといけないんだ?そんな金があるならば、別に被害を受けた場所を直してほしい」
↑という意見が住民はもちろん、地元政治家、首長、企業経営者から多いのだ😫そもそも自分たちは普段の移動で鉄道なんて使わない。もっぱらクルマだ。九州だったらバスを選ぶことも多いだろう。私が思うにはこれは妥当な意見である。そのように考えて「普通」なのだ。
むしろ大雨で被災した鉄道を元に戻して、復活する際には地元や鉄道会社もそれなりの「覚悟」が必要だ。簡単に言えば「カネと利用者アップ」に尽きてしまう議論にもなりがちだが、それを抜きにして「地元に必要な交通機関」として今後も生きて行き、地元と一緒に発展してゆく・・・そのためには鉄道会社だけの努力では到底無理で、多くの住民が「鉄道に乗る」「鉄道で通勤通学する」と言った行動に移す事が出来ないといけない。これが基礎条件である。観光客に来てもらう、乗り鉄に乗ってもらうといった「非日常的なお客」の利用は二の次だ。
大雨で被災した鉄道が「交通機関として必要」ならば残るし、「交通機関として要らない」のであれば残らない。それが被災した鉄道の宿命でもあるし、「交通機関として要らない」を選択すればそれは廃止と言う運命。そういう方程式が近年特に形成されつつある。
直接的な災害で廃止された鉄道と言えば、近年では宮崎県の高千穂鉄道や岩手県の岩泉線等であるが、広島県・島根県にあった三江線のように
「災害を受けて元に戻したかと思いきやまた災害を受けて元に戻す・・・と言うのは安全面でも費用面でも合理的ではない」
として予防的に廃止された路線も出始めている事実😞三江線の場合はそれに加えて「利用不振」が大きかったが、このような条件が重なると今後全国的に鉄道路線の合理化が進行するに違いないとさえも私は思っている。
Twitterでは「肥薩線廃止」という言葉が令和2年7月豪雨の被害を受けて多数並んでいたが、それを被災直後に言うのも不謹慎だ😫被害の全容を把握して、被害額も算出した所で今後どうするのか?と言う方向性を決めるべきで、それが示されるまでは安易に「廃止」と言うべきではない。
鉄道を残す・残さないは鉄道会社が決める所も大きいが、結局は普段から利用者が多い地元の人で、今後「交通機関として必要」なのか?否か?もう一度よく考えるべきであろう。
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