【富山ライトレールで岩瀬浜へ往復】富山の路面電車に乗る③
前回までの続きはこちらをクリック。
【万葉線のドラえもんトラム/無料の渡船と新湊大橋】富山の路面電車に乗る①
【富山地方鉄道のセントラム・サントラム】富山の路面電車に乗る②
もくじ
★JR富山港線から転換した路面電車の富山ライトレールに乗る!
【日付】2016年8月22日(月)
【場所】富山ライトレール線(旧JR西日本の富山港線)
富山駅の南北で性格の異なる路面電車があるもの大きな特徴だ。
メインとなる山側(南)は、富山市中心部で富山地方鉄道市内線が通る。
一方で海側(北)は北日本放送(KNB)やインテック(IT企業)の本社ビルが目立つくらいで、基本的には典型的な住宅地である。
富山駅の営業形態も南北で異なり、山側は新幹線にあいの風とやま鉄道が改札口・きっぷ売り場(いずれも直営駅)、飲食店・土産物店等が構えるのに対して、海側はJR西日本の子会社が業務委託の形で改札業務とみどりの窓口がある程度。飲食店や土産物店は少ない。(2016年現在)

↑海側駅舎の目の前にのりばを構えるのが富山ライトレール。
元々はJR西日本の富山港線と言うローカル線であったが、2006年に路面電車方式に転換し、運営主体も地元資本の第三セクター会社に変わった。運転士のほとんどは地鉄出身のようで、出向者も少なくないと聞く。
実質的には「地鉄の路線」のようなもので、富山駅を挟んで北側と南側では運行会社と言う看板だけが違っていた。富山駅の真下で富山ライトレールと地鉄市内線が直結する2020年2月に、富山ライトレールと言う会社は富山地方鉄道に吸収合併される事が決まった。元をたどると富山港線は地鉄の路線で、それが国に買収されて国鉄→JRと至った経緯があるので、再び富山港線(2019年9月時点における富山ライトレール)は77年ぶりに地鉄の路線として復活する。
JR時代は富山市郊外の人口の多いエリアを通っていたにもかかわらず、本数が1本/時が基本で、とても「使える」交通機関ではなかった。
富山ライトレールになって、本数の大幅な増加(4本/時)と均一運賃(200円)で「使える」交通機関に進化した。これにより「乗りやすく」なっている。公共交通機関では需要がある事も大切だが、ジャストインタイムで便があるのか?も利用を増やす・減らすポイントなる。むやみに本数を増やしても固定費が上昇するだけで、会社としても収益性に悩むので、需要と供給のバランスの見極めが大変な所だ。
富山駅の前にある電停名を「富山駅北」と称する。奥田中学校前までは併用軌道(道路の中を通る)。ここから岩瀬浜まではJRから引き継いだ専用軌道(鉄道のみが通る)。

↑富山の夏は暑い。湿度も高く不快なものである。北陸全体的にそれは言えたことで、待ち時間少しでも”涼”を感じてもらうため、ミストが噴射されていた。

↑前述のとおり、富山ライトレールは4本/時で、15分おきに来る。
富山駅北では毎時00・15・30・45分発になる事が多く、岩瀬浜までは約25分で行ける。車庫に入出庫する絡みを除き原則として富山駅北~岩瀬浜の通し運行だ。

↑地鉄市内線・万葉線と同じく、後ろ側のドアが乗車口。もちろんノンステップ。
均一運賃のため整理券がないのも地鉄と同じだ。どこまで乗っても運賃は変わらないので、近いと高く感じるし、逆に遠いと安く感じる。専用のICカード(passca・パスカ)も存在するが、JR系のICカードは使う事が出来ない。

↑富山ライトレールではTLR0600形と称する形式だが、地鉄のセントラムや万葉線のアイトラムと同じタイプの車両で、構造上大きな違いはない。
9:30発の岩瀬浜行きは0602編成。各編成ごとに色が設定されており、この編成はオレンジ。
各ボックス1~2人程度で立っているお客は居ない。中心部から郊外に対して人の流れが薄くなる時間帯のため、これくらいの利用者数になってもおかしい事ではない。
車内を見ていると、ロングシートはどこにもない。
KNB本社前(電停なし)を通過し右に曲がるとインテック本社前(電停あり)。交通量が多い道で車道のど真ん中を富山ライトレールが通る。
次の電停は奥田中学校前であるが、この間の距離はやや長い。
ちょうど中間部分に永楽町(仮称)と言う新たな電停を設置する計画。2019年度に着工し2020年頃に完成する予定だと言う。会社や住宅が多いため、十分利用が見込めるはずだ。
奥田中学校前からは専用軌道で、ここから岩瀬浜までクルマと一緒に通る事はない。
元々JR線路だったため規格が良く、路面電車とは思えないほど速くなる。この辺は地鉄の市内線・環状線と大きく違う。
★富山ライトレールになって段差がない駅になった!JR時代の面影が今でも残る東岩瀬駅


↑東岩瀬で下車。構造上は単線で交換不可の駅であるが、岩瀬浜方面行きと富山駅北方面行きでのりば(ホーム)が異なる。
前者は岩瀬浜方面行きに進んだ場所に1面1線。ホームは完全に段差がなく、ノンステップで並行する道路の歩道に出る事が出来る。これが富山ライトレールの最大の特徴で、誰にでも優しいと言える。


↑一方で富山駅北方面行きは、その方向に少し進んだ場所で実際ののりばは1面1線のみ。写真右側の建物はJR時代から使用されている駅舎で、「待合室は自由に使って良い」とあった。
よくありがちな1面1線ホームで上下の列車に乗せるのではなく、完全に行先別にのりばを分離している。
富山ライトレールは単線であるが、交換可能なのは奥田中学校前、粟島(大阪屋ショップ前)、城川原、大広田の4電停のみで、それ以外は東岩瀬と同じ構造の電停が多く、他に越中中島、犬島新町等も該当する。





↑待合室の内部。地域の憩いの場としても活用されており、畳が敷いてある部分もあった。しかし、ここから直接ホームに入る事は出来ず、一旦外に出て踏切を渡る事になる。
★岩瀬の街並み
東岩瀬駅からは岩瀬地区の旧街並みを見る事にした。




↑銀行や商店が複数あるが、全て現役で使用。写真の北陸銀行や富山第一銀行は昔の雰囲気を大切している。初めて来た視点からすれば、「これが銀行なのか」と思うほどであった。
★富山ライトレールの終着岩瀬浜駅はフィーダーバスとの乗り換え地点として機能

↑岩瀬浜~競輪場前を通る富山駅北行きの富山ライトレールの列車。この一帯も見所がタップリで、いつ来ても飽きることはない。この写真を撮影している場所は富山ライトレールを撮影する場所としても有名。


↑岩瀬浜は1面1線の行き止まり式。電停にはバス停があり、連絡バス(フィーダーバス)が連絡するが、富山ライトレールほど本数が多くなく、あっても1本/時である。
富山観光の名物ともなっており、他県ナンバーのクルマが岩瀬浜の電停前に乗りつけると何人も降りてきて、富山ライトレールに乗り換えた。
手頃に乗れる便利さ・本数の多さ・バス等の二次交通との接続もあるとあって、「使える交通機関」として進化した富山ライトレール。
地方では公共交通そのものが衰退し、JRの路線ですら廃止が出始めているが、元をたどれば富山ライトレール富山港線もそれであった。
たまたま人口が多いエリアを通っていたので、利便性向上によってお客を増やす事に成功。今でもお客を増やす努力をしっかりとやっている事は評価できる。
それは市中企業でよくある「営業努力」で片付けてしまえばそれまでだが、公共交通機関はそれだけではお客を増やす事に限界があるのではないか?とも最近思うようになってきた。
クルマの普及率が国内最多の富山県。クルマから転移させるためには、公共交通に乗り換えがスムーズに出来るようにしたり、ジャストタイムに列車がある事は最大のポイント。これが出来なければ、公共交通への転移は出来ない。
そういう不利な状況がありながらも、手頃に、しかも安く乗れるから路面電車が普及しているのではないかと感じた。
公共交通のあり方は考え出すと相当深く、難しい問題だ。
最近のコメント