【万葉線のドラえもんトラム/無料の渡船と新湊大橋】富山の路面電車に乗る①
富山県は日本最大級の路面電車王国だ。
決して広くない県なのに、県都富山市、第二の都市高岡市で路面電車を展開。今でも新型車両の導入が継続され、運賃を安くしたり、本数を増やしたりして利便性向上。市の中心部と郊外の移動を便利にさせた。
裏返せばクルマから公共交通への転移させたい行政サイドの意図も見えてくる。
富山県はマイカー普及率が国内トップクラスで、公共交通は衰退する一方。路面電車も生活の一部として溶け込んでいる所が乗り歩いていて見えてきた。
もくじ
★富山県高岡市から射水市にかけて走る路面電車「万葉線」とは?
【乗車日】2016年8月21日(日)
【場所】高岡駅から万葉線で越ノ潟(こしのかた)まで往復する
JR西日本金沢総合車両所の一般公開を見た後、あいの風とやま鉄道線で高岡へ。

↑ビックリするほどキレイになった高岡駅。今はあいの風とやま鉄道(昔の北陸本線部分)とJR西日本(氷見線、城端線)が乗り入れる。駅の管理上は前者で、後者には運転上の車庫がある。万葉線の列車は駅舎内の1階から発車する。



↑高岡駅から射水(いみず)市方面に向かってあるのが万葉線。
会社の経営形態としては、高岡市、富山市、富山県が中心に出資する行政主体の第三セクター会社だ。
以前は加越能鉄道、その前は富山地方鉄道が路面電車を運行していたが、いずれも経営難で撤退している。
鉄道自体の廃止も検討されたが、地元の熱意で継続された。
運転系統は高岡駅~六渡寺(ろくどうじ)の高岡軌道線と六渡寺~越ノ潟(こしのかた)の新湊港線の2路線で構成されているが、両線との直通運転が基本で、高岡駅~越ノ潟の”通し”が基本となる。
日中は15分/本である。
写真の高岡駅はあいの風とやま鉄道線の駅と事実上の同居。
壁1枚隔てた場所にあいの風の列車が発着していた。
しかし、乗り換えは大変だ。
あいの風の改札口は高架構造の高い場所にあり、やや長い距離を進んだのち階段等を降りて万葉線ホームとなる。
路線バスと待合室を供用しており、室内は広くて明るい。
★ドラえもんトラムに乗る!

↑待合室にあったのが「ドラえもん」。
ドラえもんと高岡は深い関係がある。ドラえもんの作者は藤子・F・不二雄さん。我々の将来に夢と希望あふれる漫画を描き続けた素晴らしい漫画家だと私は思っている。彼の出身が高岡なのだ。
藤子Fとライバルであり盟友であった藤子不二雄Ⓐさん(私は小さい頃同一人物だと思っていた)は隣の氷見市出身だ。
万葉線では「ドラえもんトラム」と称する、1編成全てをドラえもんと登場人物(野比のび太等)も描かれた専用車両が存在する。
この時の時刻は14:30過ぎ。そろそろ「ドラえもん」が来るはずなのだが?すると!




↑「ドラえもんトラム」!次の14:45発の越ノ潟行きが「ドラえもんトラム」であった。
ドアは「どこでもドア」。すぐに目的地に着くわけではないが、この”仕掛け”を見るだけで夢と希望を与えてくれる。早速乗る。乗る時には先頭車両の「どこでもドア」が開いているので、ここからバスと同じように整理券をもらう。




↑運転席の周囲にはドラえもん、ドラミのぬいぐるみ。
車内の壁は青一色になっており、登場人物や「秘密道具」が多数描かれていた。
私が確認出来た秘密道具は、あんきパン、タイムマシーン、もしもボックス、わすれろ草、コンピュータペンシル、きせかえカメラ、タイムふろしき、スモールライト・・・等々だ。

↑窓には登場人物が描かれいた。のび太が野球をしている時にエラーでもしたのか?監督・エースピッチャーのジャイアンが制裁(?)で殴ろうとも。
万葉線の車両はMLRV1000形(通称アイトラム)と言われるもので、全く同じ車両は富山ライトレールや富山地方鉄道にも存在する。
低床車で車外と車内において段差が全くないバリアフリーだ。
座席はボックス部分が主体だが、座面がやや高い。
車内放送は一般的な内容でドラえもんやのび太等が放送しているわけではない。
路面電車の場合、一般の路線バスと同じく下車する場合降車ボタンを押さないといけない。
下車したいのに降車ボタンを押さないと通過してしまい、ドアも開かず下車できなくなる。
高岡駅から米島口(万葉線の本社・車庫所在地)まで一般道路のど真ん中に線路がある「併用軌道」。
車道の中央に万葉線が走り、左右が一般のクルマが通る。
併用軌道では、万葉線も道路信号に従う。
高岡市中心部ではそれなりに乗車も多かったが、段々と少なくなり、下車が一方的になった。
米島口から先は、他の鉄道路線と同じ専用軌道に変わるため速度が上がる。必ずしも越ノ潟までずっと専用軌道ではなく、能町口~中伏木のように再び併用軌道に戻る区間も部分的にある。
新湊港線に入ると下車が目立つようになる。射水市内だけでは利用するお客は皆無で、乗る人自体がいなかった。
ところで、万葉線では通称「ネコ電車」とか「アニマル電車」と言われる古い車両が主体だったが、今や少数派となってしまった。
これに乗れる事を期待したいが、結局のこの時は1運用しかなく乗れなかった。
★富山県と言えば「無料の渡し船」!今も残っているのは越ノ潟からの1路線のみ
越ノ潟と言う地名を聞いて思いつくのが渡し船(渡船)である。
越ノ潟で陸地は途絶え、富山新港と言う海になる。今でこそ新湊大橋(あいの風プロムナード)と言う富山のシンボルともなる大きな橋が架かるが、出来たのは数年前。
それまではずっと渡し船で対岸に渡っていたのである。


↑越ノ潟は1面1線しかない小さな終着駅。写真奥の大きな橋が新湊大橋。

↑万葉線を下車するとすぐにあるのが渡し船のりば。
万葉線が越ノ潟着15:34に対して、渡し船は15:37とすぐの連絡だ。
この渡し船は無料で乗船可能。特に改札や手荷物検査等なく、乗船希望であればそのまま船に乗れば良い。

↑船は2階構造になっており、1階は自転車等を収納する事も可能だ。
以前は頻繁に便があったようだが、新湊大橋開通でお客が激減したため、今は30分/本が基本。10人弱のお客を乗せて出港。



↑乗船は5分ほど。本当に対岸と対岸を結ぶだけの役割で、「のんびり船旅」なんて出来ない。どうみても海にしか見えないが、実際には川である。
折り返しはわずかで15:44には再び越ノ潟へ戻った。どうやら越ノ潟をベース基地にしているらしい。
折り返し便にもそのまま乗り続けるお客は居て、無料なので乗組員もうるさいことは何も言わない。
★新湊大橋を徒歩で渡る
行きと帰りが同じ手段で移動するのはつまらないので、帰りは新湊大橋を徒歩で渡る。
クルマと徒歩の両方で渡る事が出来るが、後者の場合地上から橋までの連絡方法はエレベーター。それで昇り橋の内部は徒歩となる。
自転車も通れるが押して歩く事になる。


↑広い公園となっている新湊大橋の徒歩における入口付近。ここからエレベータで一気に橋の上に。当たり前だけど、下から見上げると「大きな橋」だ。




↑橋の内部と橋からの眺めはこの通りだ。風が通りにくい。当日は蒸し暑い天候でかなりの汗をかいた。夏場に新湊大橋を歩いて渡るならば、熱中症対策が必要だ。
海に大型のタンカーが通るとかなりダイナミックな光景が見られる。

↑新湊大橋を降りてからは海王丸パークにも顔を出し、高岡駅行きで戻る。
★帰りも「ドラえもんトラム」!

↑先ほど乗った「ドラえもんトラム」が戻ってきた。この高岡駅行きで帰ったので、往復「ドラえもんトラム」であった。
最後に断わっておくが、この日「ドラえもんトラム」に乗れたのは偶然である。運用等を事前に調査した上で”狙って乗った”わけではない。
「ドラえもんトラム」それは、町興しであるとともに、夢と希望があふれる世界が展開されていた。
3年前の話にはなるが、今(2019年8月)も運行されている。今の所は2021年までの限定との事であるが、ぜひ乗ってほしい路面電車だ。
2回目に続く
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