【旅客救済について考える】山陽新幹線のぞみ176号バードストライクと認識→実は人身事故だった!
もくじ
★バードストライク?人身事故?難しい判断だったと思う
【日時】2018(平成30)年6月14日(木)、14:10頃
【場所】JR西日本の山陽新幹線、博多→新下関にかけて
【当該列車】7176A(のぞみ176号、博多13:53→小倉14:10→広島15:03→新大阪16:30→東京19:03)
【当該車両】700系3000番台B8編成

↑写真はイメージ。
【事情】
7176Aの運転士は、博多→小倉を走行中に大きな音があった事を認めた。 しかし、「小動物と当っただろう。運行には支障がない」と判断。JR西日本の内規では運行に支障がない小動物との衝突(以下、「バードストライク」とする)であっても、運行指令にその旨を無線等で連絡する事が決まっている。
だが、運転士は連絡を怠った。 小倉駅で列車監視をしていた駅員は、当該車両のボンネットが破損している事を認めたが、「運行には支障がない」と判断し、そのまま発車させた。 小倉駅付近で博多方面行きの列車の運転士が、当該列車のボンネットが破損している事を見つけて指令に通報。指令は強制的に次の新下関駅に臨時停車させた。 ボンネットを点検した所、大きく破損しており、内部から人の遺体の一部が見つかった。
この時点でバードストライクではなくて、人身事故であったことが確定。 問題はどこで人身事故が発生したのか? 人身事故の場合、遺留物の捜索や警察の現場検証が必要になるため、これが終了するまで列車運行を再開させる事が出来ないのが鉄則だ。今回の場合、そもそもどの辺で発生したのか?不明であったため、博多→小倉の約67kmを中心に基本的には徒歩で探す事になったため、場所の特定に時間を要した。
6月14日の20時ごろ、北九州市内のトンネル付近で遺留物や遺体の一部が発見出来た。さらに、近くには無人の自動車が乗り捨てられており、遺体や自動車の中にある指紋と照合した結果、この自動車の持ち主が新幹線線路内に進入した事が確定した。すなわち、自殺である。
JR西日本は、事故処理が終わるメドがたたないと判断。事故発生直後から最終列車までの終日博多~広島で運行を取り止めた。JR西日本は約4万人が影響したとしているが、実際にはこの倍の8万人程度はいただろう。 代替交通となれば、高速バス、航空機となるが、いずれもすぐに満席となった。沿線の宿もすぐに満室となった。在来線については、特発は特になかったらしいが、詳細は後術する。中にはクルマを用意して九州から大阪まで高速道路を走って行く”猛者”も居たようだが、それは極少数であろう。
【私が思う事】
これについては、難しい現場判断になるのではないか? 在来線とは異なり、新幹線では300km/h前後で走行しているため線路上に人がいたとしても発見できない可能性がある。仮に発見出来て非常制動を扱ってもN700系の場合少なくても2300m、普通の新幹線でも3000mは走ってしまう。自殺希望者であれば、”簡単に死ねる道具”であるが、事故後の処理は在来線以上に大変な事になる。
7176A運転士が人がいた事を発見出来なかったと考えるのが自然で、大きな音がしてやっとわかったが、バードストライクなんて日常的にあるし、この大きな音が機械の故障なのか?人身か?バードストライクか?瞬間的に判断せよと言われても、それは”酷”なのではないか。
バードストライク程度であれば、その都度駅間や駅に列車を停車させて車両点検を実施させたら、そんな事は毎日だから、ダイヤなんか崩壊する。 これについては外から見てもらって、車体が大きく破損しているような事があれば、その時点で初めて点検していいのではないか。
ただこれも、批判があるだろう。 少しでも異音がしたら何が何でも止めないといけないが、「ダイヤは崩壊する×運転士は異常ない」と言う認識であれば外から見てもらって外からの判断でダメならば車両点検・・・・・・と言う難しい選択をしないといけないのだと思う。 個人的な意見だが、私ならば今回の状況からすれば後者を選択するだろう。
★在来線への旅客救済は考えなかったのか?
今回の輸送障害は人身事故では異例の長時間運休となった。 JR西日本は、これと言って旅客救済はしなかったと思われる。 旅客救済と言えば、JRのきっぷのルールに従った取扱、すなわち払い戻し等を受け付ける程度で、JRではおなじみの「運行再開するまで待ってろ!」の一点張りであった。
博多~広島で新幹線の運行が出来ないのであれば、同区間で在来線への振替輸送を実施すると言う考えはなかったのか?と私は問いたい。
博多~小倉~下関についてはJR九州の管内になるが、同社の協力も得て超臨時的に特発や定期列車への増結を出来なかったのか? JR西日本管内になる下関~広島については、九州内よりも容易に出来たはずで、在来線にお客を誘導させて新幹線利用者のみ使える特発を設定。下関を発車すると新幹線停車駅だけ停車。厚狭、新山口、徳山、岩国(新岩国に相当)のみ。 新幹線であれば、1時間程度であるが、在来線では定期列車の間を縫う事になるため、3時間程度かかると思われるが
お客を滞留させておくよりはマシで、お客を移動させる機会を作らないといけない。
代替手段すなわち在来線があるならば、終日新幹線が運休になっても、特発の在来線を設定するのは、JRにとって責務ではないのか? こういう有事の際に在来線ネットワークを活用出来ないのは、あまりにも情けない。
臨時列車を仕立てて救済する、自社管内で車両があるならできないことではありませんが、JR各社は理由付けてでもやりませんね。
状況は全く違いますが、以前水郡線の水戸エリア駅にて列車待ちしていたところ、「郡山地区落雷により大幅遅延」と電光表示があり、結果2時間遅れ。
ならば常陸大子に車両があるから、臨時水戸行きを出せば済むのにやりません。
「地域密着」をうたいながらの分割民営化は嘘でしたがモロわかりです。
どの会社も要員、車両数が国鉄時代よりも大幅に減少しているので、些細な輸送障害1つで大きく運休してしまう・・・それが現状です。