JR発足30年特別企画②~ボロ儲けのJR東海×倒産現実的JR北海道=国鉄分割方法合っていたのか?

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★ボロ儲けしているJR東海×倒産寸前のJR北海道×儲かる場所が限定的なJR西日本

当ブログには以下のような趣旨のコメントがたくさん付いている。

「JR東海は在来線事業に対してやる気がない。だったら在来線を全てス捨てて、豊橋を境に東側がJR東日本、西側をJR西日本に移管させるべきだ」

「国鉄分割民営化の方法が間違えていた。国鉄の段階で東海道新幹線はボロ儲けするので、新幹線専用の会社を作ってよかった」

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↑確かにJR東海は東海道新幹線だけでメシが食って行ける。
JR東海の旅客運輸収入を見ると、実に92%が新幹線。在来線はたったの8%しかない。金額にすると新幹線は軽く1兆円を超えるのに対して、在来線は1,000億円前後しかない。
単一路線だけでこれだけ多くの収入を稼いでいるJR線は、東海道新幹線しかなく、それを運営するJR東海と言う会社が”ボロ儲け”して当然なのだ。

JR東海の営業対策を見ていると、お客が多く稼ぎ頭である東海道新幹線が主体で、在来線に至ってはかなり消極的だ。
在来線で使う事が出来る、交通系ICカードは手数料収入が得られる。JR東日本では経営上非常に重要な収入源になっている。これがなくなると、会社の経営が揺らぐほどのレベルになっている。
鉄道、エキナカ利用はもちろん、市中店における利用促進活動をするのが他社では一般的。時期に応じて割引等の”お得感”あるそれをしているが、JR東海ではこれと言った活動はほとんどない。
単に「鉄道や市中店で使えるようになりました」だけで止まっており、それ以外の”付加価値”が皆無だ。
”付加価値”活動をやらない理由は、在来線や交通系ICカードに興味ない事、手数料収入で得られる額は新幹線と比べれば”へ”とも言える程度の額しかないから、消極的なのだ。
東海道新幹線のお客にとって、TOICAは関係なく、在来線がない関東・関西地区在住だと、TOICAの存在自体知らない人も珍しくない。
むしろ、JR東海の交通系ICカードは「EX-IC」と誤解している人もいるくらいだ。

JR東海はリニア中央新幹線を建設している。
現時点で、建設に必要な金額は全て「自己負担」である。
もちろん東海道新幹線で稼いだカネが原資である。
整備新幹線は税金が投入されているのに対して、技術的にまだ発展途上とも言えるリニアは国が関与せずに、JR東海と言う一企業だけで全てをやろうとしているのは、技術力とか「やろう」とする気持ちがあって、なおかつそれだけのカネを内部留保なんかに回さずに、パッと!使えるのがこの会社のスゴイ所だ。

JR東海の前身は言うまでもなく、全国統一運営であった国鉄。
本来ならば、今JR東海がやっている事を全国津々浦々でお客に還元しないといけない。
しかし、それが出来ているのは東海道新幹線とリニアだけで、同じ会社でも静岡、飯田、三重と言った在来線不採算部門では、新幹線並みの高水準なサービス等が出来ているとは思えない。

ただ、これが他のJR各社と比較してしまえば、「はるかに上」なのは間違えなく、マクラギのコンクリート化は当たり前で、木のマクラギは本線上で見かける事が他社よりも少ない。
線路もキレイに草刈りがなされており、マクラギの間から草がボウボウに生えているのも、JR東海では皆無。
バラストも糊のようなもので固定され、ちょっとの列車風で飛ばされる事がない。
これが「JR標準の線路」と考えると大間違えで、JR東日本やJR九州では、これよりもかなり劣悪な線路を私は多々見ている。
どことは申し上げないが、某幹線路線で線路とマクラギを支えるボルトが浮いていて、列車が通過するたびに線路が激しく揺れ動く姿を見た事がある。
こんな事はJR東海ではありえない。


↑一方で、北海道はどうだろうか?
国鉄時代、道内には5,000km以上の鉄道が存在した。
しかし、ほとんどが利用不振のローカル線で、国鉄末期にいわゆる「赤字83線区」に多くがリストアップされ、結果としてほぼ全てが廃止→バス転換となった。
国鉄時代から、「北海道では儲からない」と言う事はわかり切っていた。
JR北海道と言う会社を設立した際に、前提として「黒字にならない」としていたのだ。今ではありえない前提である。

国鉄は、「北海道は経営が厳しくなるだろうから、経営安定基金をたくさん用意しておこう」とした。その額は6,822億円。JR九州の倍近くはある。
すなわち、経営安定基金と言われるファンド運用で得られた運用益を活用し赤字を穴埋めする事で、赤字額を少なくするか、黒字化しようとした。

当初はそれで上手くいった。
JR北海道発足後、バブル景気等により運用益が多額に得られた。
しかし、バブルが崩壊。超低金利時代に突入し、運用益の額は少なくなった。
JR北海道の経営努力等によって、運用益は少ないながらも、頑張ってなんとか黒字を確保した。

2011年の石勝線火災脱線事故で状況がガラリと変わる。
車両、線路に対する安全対策をしっかりとやる、老朽化した鉄道施設の更新等で、JR北海道の収入以上にこれらに充てる支出が必要になった。
「お金がないから出来ない」と言うのは、もはや”言い訳”に過ぎず、国からも「やれ」と指示されている以上、何が何でもやらねばならない状況になっている。

現在でも、北海道にはお客が極端に少ない路線が多々ある。
「お客が少ない」と言う基準は、鉄道の特性が発揮できない1日1kmあたり4,000人以下を示す。
それ以下だと、バスでも十分可能と言うのが国鉄時代からの理屈だ。
JR北海道の現在の「数字」を申し上げれば、実に半分近くの線区でそれに該当する。つまり、それに該当する路線は全て廃止したいのが本音だ。
JR北海道は2016年11月、約半数の線区が自社では維持する事が出来ない「維持困難線区」として公表した。
現時点では、「役所や地元と話し合いをする段階」としているが、そんなにゆっくりする事が出来ない事態に発展。

と言うのは、先日公表された2017年度の収支予測で、営業利益だけで500億円以上の赤字、最終的にも200億円以上の赤字になると言うもの。これだけの「数字」を見れば、普通の会社ならば倒産していて良い事になる。

さらに社員も会社を嫌に見ている。
「JR北海道には未来がない」、「JR北海道が倒産して自分が路頭に迷う前に辞めておこう」とする社員が大変多く、2016年度だけで100人近くが自ら退職したと言う。
社員数約7,000人に対しての100人の退職は、かなり痛い。
退職した分を上手く補充出来れば良いのだが、就活中の人に言わせると「JR北海道には入りたくない」と言う人が増えていると言う。人が増える状況ではなく、毎日の列車運行にも支障が出かねない事に将来的にはなるだろう。

批判承知で持論を申し上げたいが、人が集まらないのであれば、全国の鉄道ファン(男女問わず、年齢は50歳位まで、学歴・職歴問わず)だけ求人募集をかけて、鉄道に対する「憧れ」だけではなくて、ちゃんと仕事として、責任を持って、社会的使命や社会的責任を果たしたい、定年まで何が何でもJR北海道で働くんだと言う強い「志」がある人を積極的に雇用しても良いと思う。
そういう、元々の士気が高い人を雇用しないと、この会社は良くならないと思う。
その方がある意味では「即戦力」になるし、職場や仕事に対する士気がさらに上がるし、鉄道ファンだからこそ見る事が出来る「お客様目線」でサービスを展開し、さらにお客様を増やす工夫や努力と言うのが出来るのではないかと思う。
もし、このような手段でJR北海道が雇用する気があるんだったら私は手を挙げても良い。

話がそれたが、2017年度も引き続き厳しい経営が続く。
そして今問題になっているのが、2019年以降である。
現在は役所から合計1,200億円の支援を受けているが、2019年度には終了。それ以降支援継続になるか?現時点で未決定。
仮に支援が終了した場合、銀行からの融資に頼る事になるが、決して大きな額とは言えず、今まで銀行からの融資を逆に返済しないといけなくなる時期に突入する。
つまり、安全対策と言う設備投資に加えて借金返済も重なり、収入は大きく増えないとなれば、必要な資金が枯渇(ショート)する。
そうなると、JR北海道は完全に事業停止となる。
つまり、毎日来るはずの列車が来なくなり、これは特急・新幹線とも例外ではない。
事業停止になると言う事は、「倒産」を意味する。
もしJR北海道が倒産すれば、直接的に鉄道を使用しなくても、道民生活には悪影響となる。社会や経済にとって下手すれば致命的な事態になりかねない。

当然JR北海道も最悪の事態を避けたいわけで、いろんな手を打っている。「維持困難線区」の公表と赤字路線の廃止はその一環に過ぎない。
自社で単独経営が出来ない場合、役所からの支援以外に、JR東日本との合併話も出ており、麻生財務相が国会でそのようなプランを発言するほどだ。
JR東日本はそれには否定的だ。理由は簡単。「株主の理解を得られないから」である。
百歩譲って、「株主の理解は得られた」としても、JR東日本がJR北海道と合併した所で、「設備投資」とか「赤字」と言った負担が増すだけで、売り上げや粗利が極端に増えるわけではない。
営業的に言ってしまえば、「えきねっと」や「大人の休日倶楽部」等のJR東日本商品を直接JR北海道でも販売しているので、販路拡大は既に実施済みなのである。
すなわち、「ウマい」所は1個もないのである。

深刻度を増すJR北海道の問題であるが、国鉄分割民営化の際に「北海道だけ」の会社ではなく、「東日本+北海道」の会社にすれば、こんなような事はなかったと思う。
変な話、旅客部門の会社を全国1社にしてしまえば、東海道新幹線の収入が北海道の赤字路線の補てんに回っていたのかもしれないのだ。
「北海道だけの会社」いくらなんでも無茶だったと言うしかなく、これは結果論だが分割方法自体誤りだったと言わざるを得ない。

↑JR西日本についても書いておかないといけない。
2005年の福知山線脱線事故の時以下のような”言い訳”をした。

「当社は、国鉄から分割民営化される際に収入源となる路線が限定的だった。不採算路線が多くコスト削減が課題だった」

今でこそ、新快速(写真)や新幹線は収入源路線(列車)に発展。
特に新快速は早朝~深夜まで12両連結し15分/本の運転を実現。
着席がなかなか難しく、昼間でも立たされることが珍しくない。JR西日本にとっては、かなりの収入源になっている。
関西地区では元々、国鉄の利用者が少なく、阪急、阪神、京阪、近鉄等の私鉄の利用者が多かった。JR西日本発足後、速度向上やその他サービスアップにより、私鉄からお客を奪い取った。
それは山陽新幹線でもいえた事だ。

↑ところで、地方の路線に目を向けるとどうだろうか?
岡山・山口地区では、国鉄型の115系等がまだまだ主力。
広島地区では新型の227系に置き換わる事が前提だが、残る岡山・山口地区ではそのような話はウワサレベルでも聞こえてこない。
概ね1977~1982年にかけて登場した車両が多くを占めるが、それでも車齢は40年前後。
普通ならば、引退させて良い時期だ。JR西日本の車両維持レベルが高い事もあって、他社よりも「長持ち」しているが、新しい車両を買うコストがないので、一応コストはかけるが、それは延命や車内を225系等に準じたリニューアルが主体だ。

↑鳥取・島根地区では、キハ126系(写真)等の比較的新しい車両を入れている。しかし、購入費用はJR西日本が出したのではなく、沿線自治体である。
JR西日本は、「新車が欲しいならば、地元がお金を出してよ」と言うスタンスで、不採算路線に対する設備投資が極めて消極的であった。
普段の線路維持にも表れており、本来メンテナンスを深夜にやるべきところを、コストが高い事を理由にあえて列車を平日日中(路線によっては土日もあり)に運休させて実施した。
代行輸送(バス等)でやると、やはりコストが高くなるため、これもやらないほどの徹底ぶりで、長くに渡ってやってきた。
お客からの評判はとんでもなく悪く、近年は運休を伴う昼間のメンテナンス自体を中止か、昼間にやる場合は代行輸送くらいは提供するようになっている。

JR西日本は約5,000kmもあるので、当然多くの自治体がある。
自治体によって温度差もあって、お金を出していい所もあれば、全く出さない所もあって、特に後者だと車両は古いまま、日中に線路メンテナンスは積極的に実施と、かなり劣悪なサービスをしていた。
なんでこんな事をやるのか?と言うと、中国地方を中心に不採算路線が多すぎるからだ。
「やっと2018年春には三江線が廃止できる」…と言うのがJR西日本の本音だと思う。
さらに来島社長は、「将来的には路線の廃止を積極的に検討」と語っており、「第二・第三の三江線」になる路線は残念ながら今後も出て来そうだ。
たまたま、JR西日本は売り上げが大きいので、JR北海道のように倒産と言う致命的な事はないが、不採算路線をいつまでも放置するわけにはいかないはずで、今後積極的なリストラをしないと、将来的にはJR北海道と同じ事になりかねないと言う強い危機意識があるはず。
最近はJR四国も同じような危機感を持っている。

もうこれは「タラレバ」になるが、もしJR西日本が東海道新幹線を持っていたら・・・。
中国地方を中心に自社の費用で、積極的に新車投入、線路維持レベルの向上、徐行区間を少なくできたはずだ。

★では、どのように民営化するべきだったのか?



あくまでも個人的な意見となる。
国鉄を民営化する所までは良かったが、「分割」と言うのは良くなかった。
すなわち、旅客部門は全国1社、貨物部門は全国1社にするべきだった。
民営化した会社は、鉄道とは直接関係ない事業も自由に営む事が出来るようにして、利益追求の会社に作り変えればよかったと思う。
車両等も「全国統一」は止めて、各地の特色や輸送事情に合わせた車両を入れれば良かった。

「分割」を選択すると、必ず「A社は儲かっている」「B社は儲かっていない」と言う不公平が絶対発生する。
それはサービスレベルやダイヤ、運賃等にも反映されるため、良くない。
同じ会社にしておいて、各地に支社や営業所を配置するわけだから、そこで展開する末端のサービスは各地の事情や風土に合ったものを提供すれば良いのだ。

民営化のやり方と言うのは、みなさんそれぞれいろんな考え方があると思う。それを聞いてみたい。

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KH8000

ご覧くださいまして、ありがとうございます。 当ブログは鉄道・バス・ヒコーキ・船について、読者の皆様が”乗りたくなる”公共交通機関の魅力をお伝えします。 実際に私が乗った時・撮った時の感想などについて「乗車記」「撮影記」として、各地の秘境駅や注目の鉄道駅に直接訪問し現地で知り得た事を「現地調査」として、”他所よりも詳しく”、鉄道系YouTuberに負けぬほどの勢い・情報量・知識・感動体験を当ブログでお伝えします。 私はJR全路線全区間乗車(JR完乗)済みで、鉄道友の会の正会員(一応某支部の幹部・撮影会などの行事についても詳しくお伝えします)です。当ブログのフォロー(ブックマーク)は誰からも大歓迎です。

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1件の返信

  1. 忍者てつ丸 より:

    私も民営化は仕方ないとしても、分割に関しては否定的です。
    当時の国鉄や政府与党は「分割で小回りが効く」「地域密着の仕組みができる」など言ってました。
    確かに部分的には乗客が混む時間帯の増便などしましたが、
    会社間にまたがる直通普通快速列車は、四国マリンライナーなど特殊なもの以外ほぼ境界駅で分断。
    なにより夜行列車は今やサンライズ以外全滅と、会社間で温度差が出た結果です。
    そのうえいよいよJ北だけの値上げと、運賃までもが違ってきてしまうことになりました。
    鉄道は他産業と違い、「儲かりそうな札幌旭川間に新民鉄を並行して作り、安い運賃でJR北から客を取る」などできません。
    バスなど他交通機関もあるにはありますが、鉄道だけならそれ利用するしか無いですし、
    国や自治体も最後はお金を出すとするしかありませんね。

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