東急がJR北海道を救う?!「THE ROYAL EXPRESS」が北海道を走る事は本当に出来るのか?

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東京急行電鉄(東急)は、北海道において自社の豪華観光列車を走らせる方針を固めた。やり方としては、東急の豪華観光列車をJR北海道から線路を借りる形で運行したい方針で、JR北海道も赤字で倒産寸前となっている現状からすると、非常にありがたい話しに違いなく、JR北海道も非常に前向きな姿勢である。

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ニュース、各ブログやSNS、世間体としては賛成の意見が多く、私も大いに賛成である。

しかし、車両の技術面でいろいろと問題がある事、東急とJR北海道は資本面・人事面で元々交流がないため集客はどうするのか、意外な所としてデザイナーが北海道で走らせる事を認めるのか(この点はほんとの人が指摘しないので私から指摘させてもらう)等々の問題点を中心に述べる。

★東急が北海道で走らせる狙いと概要は?


東急電鉄(東京)とJR北海道は、北海道内で豪華観光列車の運行を計画している。早ければ2020年度中に開始する。関係者が25日、明らかにした。

 国土交通省によると、関東の私鉄大手が北海道で観光列車を運行するのは異例。関係者の説明では、運行計画は未定だが、道内の観光地や自然を楽しめるルートを模索している。東急は2017年に観光列車「ザ・ロイヤルエクスプレス」(8両編成)を導入してJR横浜―伊豆急下田駅間を走らせており、この車両を北海道に運んで使う可能性が高い。

 東急は観光需要の高い北海道で新規旅行商品を展開でき、JR北海道には線路使用料収入に加え、東急の観光事業のノウハウを学べるなどのメリットがあるという。

 厳しい経営が続くJR北海道に対し、国交省は新たな収入源として観光列車の充実を求めていた。ただ自前でJR他社のような豪華列車を導入する余裕はなく、私鉄を含む道外他社との連携も模索してきた。


「豪華観光列車」東急が北海道で運行へ (毎日新聞)

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190125-00000062-mai-soci

↑狙いと概要は上記新聞記事の通りである。こちらでは2020年度から運行開始としているが、一部報道では2019年夏から運行開始ともある。なお、当記事執筆時点の2019年1月26日現在、東急とJR北海道の両社からこの事についてプレスリリースで公式発表はされていない。

★「THE ROYAL EXPRESS」とは?

↑東急が今のところ想定しているのが、横浜~伊豆急下田で運行している「THE ROYAL EXPRESS」(ザ・ロイヤルエクスプレス)の車両をそのまま北海道で走らせようとしている。

写真は「THE ROYAL EXPRESS」となる前の伊豆急行2100系5次車であるが、あくまでもこの車両は東急が所有しているものではなくて、子会社の伊豆急が所有しているものである。外観や内装に関してはJR九州の肥薩線で運行中のD&S列車(観光列車)の「かわせみやませみ」に似ている。両方ともデザインを担当したのは水戸岡鋭治氏である。いわゆる「ミトーカデザイン」としておなじみで、関東では初登場と言う事もあってか、「THE ROYAL EXPRESS」の人気が高い。

「【公式】THE ROYAL EXPRESS」のホームページ

↑詳しくは公式サイトを参照されたい。誰でも簡単に乗れる列車ではない。各乗車回ごとに集客を実施して、乗車定員が100人なので、これを超過したら抽選で乗車するお客を選ぶ方式。これはJR九州の「ななつ星」やJR西日本の「瑞風」等の他社の豪華観光列車と同じである。

値段は決して安くない。プランとしては伊豆で1泊するタイプと、単に片道だけ乗車するタイプの2種類があり、前者は7~20万円、後者でも3万円~5万円程度(時期やプラン、食事内容、乗車する車両により異なる)必要なので、特急「踊り子」や「スーパービュー踊り子」に乗るよりも高くなる。

★「寒い、雪が降る」に車両が対応しないといけないが・・・

私としては「THE ROYAL EXPRESS」をそのまま北海道で走らせる事は賛成だ。だが、表題でもつけた通り「環境面では問題なのでは?」と思ってしまう。この問題を解決しないと、”計画倒れ”になりかねない。

具体的には、伊豆急線も伊東線も東海道線もJR北海道線も軌間は1,067ミリなので、走行自体は可能である。ATS等の保安装置に関してはJR北海道のそれに対応したものを搭載すれば良いだけの話で、計画の時点でその事は想定の範囲内なので特に問題なかろう。

説明しなくてもわかるが、北海道は「寒い、雪が降る」。これに車体や走行機器が対応出来ているか?がポイントになる。JR東日本のE231系1000番台とかE257系500番台は普段は暖かい所を走る事が多いが、臨時列車や広域運用等により寒い所を走る事も製造段階から想定。そのため、車体や走行機器に関しては「寒い、雪が降る」所に対応した作りに最初から出来ている。

それに対して伊豆急沿線で育った2100系には、「寒い、雪が降る」に対応していないはずだ。車体をそれに対応させるためには鋼体から作り変える必要があって、これをやったら実質的には新車を作るのと同じになる。さすがに北海道で走らせるためにそのような大掛かりな工事はやらないはずだ。それをやってしまったら、確実に「予算負け」するに決まっている。いくらカネがある”天下の東急電鉄”でさえも「やらない」のが正しい判断である。

それに対して、走行機器に関しては「寒い、雪が降る」事に対して比較的容易に対応しやすい。イメージとしては夏場はノーマルタイヤを履いていたのが、「寒い、雪が降る」状況になる冬場はスタッドレスタイヤに履き替えてチェーンも携行するのと同じである。とは言ってもクルマほど簡単には出来ないので、一度車両工場(伊豆急の伊豆高原の車庫、東急の長津田の車庫、東急グループのその他工場)に一度入庫して整備を受けるのは必須になる。

だが、それでも「寒い、雪が降る」に対応しないでそのまま北海道で走る事も可能である。但し夏季限定である。5~11月にかけてならば可能である。「THE ROYAL EXPRESS」は1編成しかなく、東急としては「北海道だけ」とする事は出来ないはずだ。「伊豆も」と言う事になるので、夏季は北海道で、冬季は伊豆でと時期によって運行場所を分ける可能性もある。

時期によって走る場所が違うため、時期変わりの時に伊豆高原の車庫~北海道の車庫(函館、札幌か?)までJR貨物に委託して、甲種輸送の貨物列車で運ぶしかない。

★「THE ROYAL EXPRESS」は直流専用電車のため、JR北海道の路線では自走不可能であるが?

JR北海道の路線は札幌・旭川・函館周辺で電化。流れている電気の種類は交流。それ以外の同社路線では非電化である。それに対して「THE ROYAL EXPRESS」は直流専用電車であるため、同じ電化でも交流区間の札幌・旭川・函館周辺では自走出来ないし、「電気」と言う燃料がないので非電化区間でも走れない。

そうなると、「どうやって動かすんだ?」となる。

最も手っ取り早いのが、「THE ROYAL EXPRESS」をディーゼル機関車で牽引してしまう事で、照明や空調と言った電源は別途電源車を連結してここから供給するしかない。

コースにもよるが、機関車なのでどうしても機回し(機関車の位置を前後逆にする事)が必要になるのがデメリット。それを不要にするのであれば、プッシュプル(機関車を前と後ろに1両ずつ連結)でも良かろうが、そうなると「何両も機関車用意出来るのか?」と言う話になってくる。

JR北海道はDD51やDE10と言ったディーゼル機関車を持っているが、前者については今やほとんどない(ひょっとしたら消滅した?)はずだ。後者は「くしろ湿原ノロッコ」等の別の観光列車用で、運行時期が重なるだろうから用意する事が出来ない。

↑そうなれば、JR貨物からDF200ディーゼル機関車を借りるしかない。運転士はJR貨物、JR北海道のどちらでも良かろう。しかし、いわゆる「F級機関車」なので重量がある。重量に対応した線路でないと走行出来ないのも事実で、札幌~函館(千歳、室蘭、函館線経由)、札幌~富良野(函館、根室線経由)、札幌~釧路(千歳、石勝、根室線経由)、札幌~北見(函館、石北線経由)ならば走行可能だろう。

これから漏れる路線、例えば釧網本線とか宗谷本線とか函館本線山線(長万部~倶知安~小樽)が線路条件的に通れるのか?疑問だ。わざわざ「THE ROYAL EXPRESS」が通るためだけに線路の改修が出来るか?と言うと、出来るわけがないので、あくまでも既存設備を活用する格好で、現実に走行可能な路線に関してのみとなるだろう。

そうなれば、釧網線や宗谷線については、「THE ROYAL EXPRESS」が走らない可能性が高い。

★北海道版の「THE ROYAL EXPRESS」の新造はあり得るか?

結論からすれば、「あり得る」だろう。但しそれは「予算負け」しなければと言う条件付き。要するにカネである。少なくてもJR北海道はそのようなカネを出せないので、東急が相当額の面倒を見ることになる。北海道は広いので1編成だけでは済まず、検査の事も考えれば3~4編成程度あった方が良い。

非電化路線が多いので、気動車による新造で、JR北海道のアイデアも入れつつなので、実質的には同社と東急の共同開発スタイルが良い。

しかし、今は構想が出た段階なのですぐに用意する事は出来ない。これから細部(デザイン等)考えるので、そこから登場までには少なくても3~4年は必要。それまでは既存の「THE ROYAL EXPRESS」を使うしかないだろう。

ここでポイントになるのがデザイナー。「鉄道ジャーナル2017年10月号」に水戸岡氏の単独インタビューが書いてある。それによると、水戸岡氏の所には全国の鉄道会社から「うちも是非ミトーカデザインの電車が欲しい」と依頼が殺到していると言う。水戸岡氏は全ての仕事は引き受けていない。鉄道会社からの応募のうち、「熱意がある会社」に限り、仕事を引き受けていると言う。

「思い切った事をやるならば参加する。JR九州で培った技術や設計、人脈を投じることになるから、中途半端に考えた列車なら参加しない。JR九州がソフトを独占しない理由はローカルの底上げにある。だから、JR九州を超える進化を目指す必要がある」

41~42ページの引用

↑この覚悟がJR北海道にあるか?

単に「ミトーカデザインの列車を走らせたい!」だけではダメ。目的地に着いたら、地元は「おもてなし」がしっかりと出来るか?それもレベルが高いものが。一応は東急がやる事なので、一見すると東急にはこの覚悟があっても、線路を貸しており、しかも北海道で観光列車を運行するので、事業主体であるJR北海道に対しても、これが求められるのは当然と言えば当然だ。

それはカネがある・ないの問題ではなくて、JR北海道が他社の観光列車を受け入れて、北海道の発着地(真っ先に考えられるのは富良野だろう)がしっかりと「おもてなし」をやって、発着地の街自身が成長と発展が出来るか?・・・これが出来ないとダメなのだ。少なくても今の報道を見る限りでは、水戸岡氏の基準には適合しないと私は思っている。水戸岡氏がOK出すとは思えないが、下記のような事も述べている。

「北海道をもっと楽しむ観光列車を走らせれば、JR北海道の価値は高まる、との言葉も一般の放言とは異なり、おそらく頭の中にすでに絵を作戦もあるのだろう。すなわち、真剣に土地の持ち物を見つめ直して考え、多くの人々と関わって全体が盛り上がって行く光景や、乗る人も沿線も憧れるような優れた商品価値を持った列車。その存在によって、人々は北海道の列車に乗りに訪れ、その存在によって、人々は北海道の列車に乗りに訪れ、そしてまた応援の輪が広がって行くとの確信があるだろう。

47ページから引用

↑北海道でないと見る事(体験)が出来ないものを、「THE ROYAL EXPRESS」を通じて提供できれば、JR北海道が潤うどころか、北海道全体のポテンシャルが上がるキッカケにもなると指摘している。これはあくまでも私の解釈であるが、それを考えればJR北海道にとっては千載一遇である。北海道は経済が疲弊し札幌市を除けば人口減少、高齢化が本州以上に酷い。それを打破するための材料として、必要な列車なのだ。

★東急とJR北海道はどのように集客するのか?

集客自体は既存の「THE ROYAL EXPRESS」の公式サイトで行えば良い。だが、そのワードで検索して申し込むお客はそもそも、「THE ROYAL EXPRESS」の存在を知っているはずだ。集客の基本はどこの世界でも、その商品を知らないお客に周知させる事が大切で、お客に周知させる宣伝活動は東急や伊豆急の駅や公式サイトはもちろん、今後JR北海道の駅や公式サイトでも展開必要になるのは言うまでもない。

「THE ROYAL EXPRESS」の公式サイトによれば、リピーター率が高いらしく、現在乗ったお客の10人に1人は2回目以上の利用だと言う。だが、前述のとおり「抽選に当たらないと乗れない」ので、「クジ運」と言う運の良し悪しも影響する。

関東からの集客であれば北海道まで航空機利用となるだろうが、航空機の座席は一般席ではなくて、JAL・ANA利用でファーストクラス利用は前提であろう。最悪はJALならば「クラスJ」も選択肢の一つであるが、それだったら「THE ROYAL EXPRESS」の座席も低いグレードの座席へ誘導としないと、”分が合わない”だろう。

★まとめ

この辺はあくまでも私の予想、「こうなれば良いな」と言うものに過ぎない。正式な事は今後東急とJR北海道の両社から公表されることなので、それを待ちたい。

現状ではいろいろと問題も多いので、これをクリアできるか?がポイントになる。みなさんの考えも披露していただければ幸いだ。


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KH8000

ご覧くださいまして、ありがとうございます。 当ブログは鉄道・バス・ヒコーキ・船について、読者の皆様が”乗りたくなる”公共交通機関の魅力をお伝えします。 実際に私が乗った時・撮った時の感想などについて「乗車記」「撮影記」として、各地の秘境駅や注目の鉄道駅に直接訪問し現地で知り得た事を「現地調査」として、”他所よりも詳しく”、鉄道系YouTuberに負けぬほどの勢い・情報量・知識・感動体験を当ブログでお伝えします。 私はJR全路線全区間乗車(JR完乗)済みで、鉄道友の会の正会員(一応某支部の幹部・撮影会などの行事についても詳しくお伝えします)です。当ブログのフォロー(ブックマーク)は誰からも大歓迎です。

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4件のフィードバック

  1. 忍者てつ丸 より:

    JR北海道には熱意が足りない、他社から豪華列車を借りて走らせたらいい、との安置な考えはよろしく無いと感じますし、
    水戸岡氏も単純に金かけた列車を走らせてもそれは一時的でしかなく、
    乗務員や出迎える地域住民の人らの熱意、お持てなしの心があってこそ、成立するとの考え方は納得できます。

    同じ北海道の元JRである道南いさり火鉄道だと、キハ40にテーブルを付け外装を変えた程度だけの列車を観光列車として走らせていますが、
    逆転の発想で、何も無い無人駅に長時間停車しバーベキューをやっていて、それが好評のようです。
    こういった限られたなかでも知恵を出せば何とかなるのに、何故JR北海道は学ばないのか、
    しかも同じ北海道内にある鉄道なのにと歯がゆさを感じます。

    東急から列車を持ち込んだり、もしくは東急の金で列車を作るのは構いませんが、
    当初は一時的に客は来るも、飽きられたらそこで終わりますし、
    水戸岡氏の思想が全てとはいえませんが、観光列車はハードではなく、ソフト含めたことをJR北海道はしっかり考えてやっていただきたいです。

    • KH8000 より:

      最近の「THE ROYAL EXRPESS」は相当苦戦しているようです。日によってはお客が10人しかいない事もあるとか。
      そのような状況で北海道で展開した所で、苦戦するのは目に見えています。
      1年目はお客が集まるかもしれない。それが3年、5年と毎年中身を変えずに展開した所で、お客も飽きるのでお客が減るのは当然。
      東急は「リピート率が高い」と称していても、実際には「SVO」や「踊り子」に客が流れているらしいので、実際に「限られたリピーター」しかいないのが正しい答えです。

      JR北海道は正直言って「商売が下手」。現場は自ら仕事を作らない・探さない・新規開拓しない風土なので、要するに「指示待ち人間の組織」です。商売が上手い会社ならばこれが逆なわけだから、現場の風土を変えないと何をやっても失敗して、”赤字の垂れ流し”みたいな会社になり続けるのは間違えないです。
      この機会に東急資本を注入して「大東急」を作っても良いのでは?全て東急の経営方針に基づき、東急の仕事のやり方でJR北海道を変えるみたいな。これが南海、京阪、近鉄、阪急あたりも加われば、かなり面白い展開になるでしょう。
      JR北海道は他社のカネで自社の赤字解消を狙う、自社の経営を安定させると言うのは非常に”だらしない”。JR北海道自身も風土、考え方を大幅に変える覚悟が必要です。少なくても今の段階では”かけら”すら見えません。

  2. 急行志摩 より:

    東急Gの集客力と言っても、東急観光は東武系になってしまいましたしどの程度あるか疑問です。

  3. KH8000 より:

    それであれば、東武の駅頭でもやれば良いでしょう。集客は首都圏では東急1社に限らず他社でも同時展開がないと、最大限の効果が出ない。

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