【パーサーの権限拡大】東海道新幹線の車掌人数削減を2018年春から実施中
JR東海は、東海道新幹線の車掌の乗務人数を見直す。また、車内販売員(以下、「パーサー」とする)の権限も拡大する。
「東海道新幹線の車内業務見直し」(JR東海ホームページ)

↑東京駅で到着後の業務を行う、後乗り車掌(最後尾に乗務しドアの開閉を行う)。
お客を全員下車させて、駅員のドア閉め合図後ドアを閉めるまでが業務範囲だ。そのため到着後数分は車両の横に立つ事になる。
もくじ
★2018年3月のダイヤ改正までは
東海道新幹線の車掌は、名古屋~新大阪の「こだま」では2人、それ以外の列車では全区間3人乗務だ。
役割が決まっており、運転士を含めた列車全体の責任者が「車掌長」若しくは「列車長」である。
違いは何か?と言うと新幹線の運転免許を持っているか、いないかで、持っていると後者、持っていないと前者となる。以下、便宜上「車掌長」に統一させていただく。
車掌長を補佐する役目が「中乗り車掌」。
この人は列車監視(発着時に窓から顔を出してホームの安全を確認・車掌長と後乗り車掌が行う)する事は少ないはずで、接客がメイン。国鉄で言う「カレチ」(旅客専務車掌)に近い。
ある時、東京発車後すぐに自由席に車掌が現れた時があった。この人こそが「中乗り車掌」である。
そして前述の「後乗り車掌」となる。途中駅での乗り換え放送もこの人の担当で、立場としては最も低い。最近は若い女性車掌も目立つ。
JR東海では、在来線の経験がなくても新幹線車掌になる事が可能だ。
東京地区や大阪地区でプロフェッショナル職採用(いわゆる一般職で駅や乗務員になる事が前提)の場合、そもそも在来線が存在しないため、駅業務経験後、新幹線車掌になるコースが存在する。当然出世すれば新幹線運転士にもなる事が可能で、キャリアモデルとして高卒で入社した場合、最短25歳くらいで憧れの新幹線をマスコンを握る事が出来る。
他のJR他社ではこのような事はなく、最低でも在来線5年以上経験しないと、新幹線の車掌すらなれない。
これは余談だが、総合職として入社した場合、必ず新幹線の運転免許を取得させる事になっているのは、極めて有名な話だ。
このような背景から、東海道新幹線では若い人や女性が乗務員になる事が多い。
★2018年3月以降原則として車掌は2人、パーサーが2人乗る
車掌の乗務人数を2018年3月開始。全列車全区間で2人にする。ほとんどの列車で1人減る事になる。
1人減らした所で、安全が守られるのか?サービスダウンになるのでは?と疑問に思うだろう。
ここで着目したいのが、車掌以外にも乗務している人がいる事だ。
それがパーサーである。
元々は車内販売やお客サービスに専念しており、運転扱いは原則としてやることが出来ない。
ここで言う運転扱いと言うのは、ドアの開閉、運転士に対する発車合図、緊急停車の指示、事故時にお客に対して避難指示・避難誘導等である。
これらは全て車掌や運転士の仕事で、お客を含め専門の資格を持たない人はやってはいけない事になっている。
JR東海はパーサーの権限を拡大させる事にした。
さすがにドアの開閉や発車・停車の指示と言った直接的な事は出来ないが、事故時にお客に対して避難指示・避難誘導、脱出用梯子の設置、渡り板(車両を並行に止めて反対側の車両に移動してもらうための通路)設置、急病人の対応、停電時の取扱も可能になる。
パーサーに対しても、事実上車掌と同じ権限を与える。2018年3月以降は、車内放送(主に下りは品川・新横浜発車後、上りは新大阪・名古屋発車後)の放送は車掌ではなく、パーサーが行うようにして車掌はすぐに検札に行くようになった。
パーサーの身分はJR東海の社員ではなく、子会社の(株)ジェイアール東海パッセンジャーズの社員である。恐らくJR東海が定めている「運転取扱」等の知識を習得させるだろう。
とは言ってもパーサー全員が出来るわけではないようだ。
このような扱いが出来る人とワゴン等で販売業務をやる人と明確に分けるようだ。
この扱いが出来るパーサーは、「のぞみ」「ひかり」では2人、「こだま」(静岡~東京等の短距離の運転の列車を除く)では1人となる。
すなわち、車掌と同じ業務が出来る乗務員の人数は、「のぞみ」では5人から4人に減る。
一方で「ひかり」では4人、「こだま」では3人と現状維持となる。
また、「こだま」では車内販売が全廃されたが、パーサーが乗るようになるからと言って、車内販売が復活すると言うわけではない。
★車掌の生産性を向上
車掌の人数が2人に減ると役割はどうなるか?
車掌長と後乗り車掌が残り、中乗り車掌は廃止される事になった。
車内の担当範囲は前半分が車掌長、後ろ半分が後乗り車掌となる。
自由席を中心に検札業務も当然ある。
しかし、1人でやるにはオーバーワークになってしまいがちだ。
そこで、車掌の生産性を向上させる事にした。
大きく分けると2つで、1つ目は「短距離乗務」の導入だ。
具体的な事は決まっていないと思うが、上記ホームページでは、「東京~新横浜」、「新大阪~京都」と言った15~30分程度で乗務が終了する、短い行路(業務シフト)を導入する。
この間に自由席を中心に検札を行い、車掌長と後乗り車両の業務を軽減させる。
「東海道新幹線 新型車掌携帯端末導入」(JR東海ホームページ)
↑もう1つが車掌が使用する携帯端末(スマホ程度の大きさ)の新型を導入する事だ。
これがかなりの万能である。
例えば、お客が乗車変更したい場合、車掌は具体的な経路等を聞きだし、それを手入力していた。私が見ていると入力する項目が多くかなり面倒そうで時間もかかっている。これは駅設置のマルスに似ている。
新型端末では、お客のきっぷをスキャン(読み取り)すると、経路等の入力が不要になると言う。
つまり、手入力操作が少なくなるので、きっぷ発行までの時間も短縮できる。
また輸送障害や運行通告が発生した場合、本来は指令所から無線連絡で口頭で伝えていた。車掌は内容をメモ書きして、お客に伝えるため、面倒と手間が生じる事、聴き間違い・書き間違いにより不正確な事がお客に放送される事もあった。
これを一気に解消させるため、指令所から必要な情報を文字で直接送信可能にする。
この端末さえ携帯していれば、車内のどこからも放送が可能になるため、迅速にお客に伝えられる。
従って車掌が本来やる業務が大幅に減少し、かつサービスダウンにもならないため、車掌1人あたりの生産性が向上する。だから車掌の人数を減らしても差し支えないのだ。
★乗務員の労働時間改革。同一組織内のみで運転士と車掌を構成
JR東海に限った事ではないが、JR各社では運転士と車掌が所属する組織が異なる場合が多々ある。
人によっては、運転士(または車掌)の顔や名前も知らない事もあるだろう。
かつては、「サンライズエクスプレス」で車掌はJR西日本、運転士はJR東海(またはJR東日本)と言ったように、会社も違っている事すらあった。(今は廃止)
東海道新幹線ではJR東海社員が新幹線を運行しているので、JR西日本やJR九州の社員は指令員を除き直接関与する事はない。
では、運転士・車掌のみをまとめた組織、すなわち「クルー」で見てみると・・・
運転士=東京第1運輸所所属
車掌=大阪第2運輸所所属
と異なる組織に所属する社員が担当する事が珍しくない。
これでは、異常時の連携が難しくなる事。
いわゆるローカルルールも存在するため(これは世間一般的な会社組織ならばどこでも言える)、同じ社でも東京第1では通用しても大阪第2では通用しない細かい事もあるはずだ。
労働と言う面でも効率が悪いため、クルーの所属組織を統一させる事になった。つまり・・・
運転士=東京第1運輸所所属
車掌=東京第1運輸所所属
とする。3人1組で行動するため、この日の行路は出勤から退勤まで同じ列車に乗務する事になる。
これは、南海電鉄で導入している「乗組制」に近いもので、JRでこれが出来るのは画期的ではないか。
なお、東海道新幹線の乗務員組織は、東京第1運輸所、東京第2運輸所、大阪第1運輸所、大阪第2運輸所、名古屋運輸所の5拠点あるが、東京と大阪にある第1と第2は同じ場所にあっても別組織のため・・・
運転士=東京第1運輸所所属
車掌=東京第2運輸所所属
で乗せる事はなかろう。
私としては、このような事がJR他社にも拡大すれば良いと思う。
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